Tits and Ass
Tits and Ass / David Blackwell.



繋驢桔(けろけつ)」という言葉をご存知ですか?

これは、ロバをつないでおく杭のこと。もともとは禅の世界で使われてきた言葉で、森田療法でもよく使われるのだそうです。

さて、その「繋驢桔(けろけつ)」とはどういうことでしょう? Weblio辞書によると、
精神の自在を奪って、向上を妨げるもの、無意味なもの、無価値なもののたとえとして使われる。
また、コトバンクでは、
字句に執着してこれに束縛されること。
と解説されています。

つまり、「繋驢桔(けろけつ)」は悩みから自由になりたいともがく人の例え。

つながれた縄や鎖の長さよりも、もっと遠くへ行きたい。でも、一定の範囲から出ることはできない。いくら必死に引っ張っても杭は抜けない。縄や鎖も断ち切れない。外に向えば向かうほど首輪は食い込み、ロバは痛みを感じるばかり。

あれ? この状態って……?

悩みという鎖につながれ、「自由になりたい!」「なんでこんなに苦しいの?」と訴えている姿。

これはまさに私ではないですか。いつも遠くを見つめ、自由になりたいと願っていました。その望みを叶えるために必死に努力しました。少しでも求める世界に近づけるよう、首輪をくい込ませながら。ときに「ド根性だ!」と自分を叱咤し、「いつか努力は報われる」と言い聞かせながら。

それでも状況は一向に改善しません。それどころか、痛みが増すばかり。

「こんなに頑張っているのに!」
「前に進めない自分が情けない」
「私はダメな人間だ」

そうして落ち込んでいました。私は周りが見えておらず、杭や鎖の存在に気付いていなかったのです。

自由になるために


私が自分の状況を冷静に見ることができるようになったのはいつだったでしょうか。はっきり覚えていませんが、気力も体力も果てて「もう、どうでもいいや」と諦めたとき、やっと現状を受け入れられるようになったのだと思います。

少しばかり制限はあっても、その範囲内で楽しく過ごすこともできる。そう気付いたとき、初めて深い悩みから解放されました。

さらに、杭の周りを掘ったり、鎖のパーツを曲げることによって、自分がつながれている状態を変えることもできる、ということにも気付きました。

理想ばかりを追いかけて期待を膨らませることが、実は自分を苦しめていた。自分が空回りしていたことを自覚して、やっと私は心を休ませることができるようになりました。

今こうして振り返ってみて思うのは、現状を客観的に把握することがいかに重要かということ。悩みを解決するための第一歩は、自分を知ることなんですね。

最後に


考え方次第で、刑務所さえもパラダイスになる。

これはちょっと言い過ぎかもしれませんが、自分の置かれた状況を冷静に見られるようになってからは、イイ感じです。落ち込んだり、泣きたくなったりすることもありますが、自分で自分の首を絞めて苦しむことはなくなりました。

もし、あなたも私と同じような苦しみを抱えているなら。

いったん立ち止まって、自分がどんな状況にいるのか観察してみてはいかがでしょうか。もしかしたら、現実を認められなかったり、苦しみを伴う場合もあるかもしれません。そんなときに「その痛みと向き合え」とは言いません。ただ、「私は今簡単に受け入れないようなつらい状況に立たされている」ということを知ってください。それだけでも、心の痛みは和らぐはずです。



<本日のBGM>
エルヴィス・プレスリー 「監獄ロック」 (1957年)

私の頭の中で、このノリノリの歌と踊りが「ブルースブラザーズ」バージョンで再生されます。「刑務所だろうが地獄だろうが関係ない!」 そう思うと気持ちがちょっと軽くなるような。

こちらは、アメリカ&イギリスのシングルチャートでNo.1に輝いたエルビスのヒット曲を収録したベストアルバム。


<本日の映画作品>
「ブルースブラザーズ」 (1980年)
監督:ジョン・ランディス
出演:ジョン・ベルーシ、ダン・エイクロイド

大好きな映画。これを観て元気をもらっています。