
前回、認知療法について簡単にご説明しました。大まかなイメージはつかんでいただけましたでしょうか。
【自分でできる認知療法】
第一回 認知療法とは
第二回 問題を整理し、目標を見つける
第三回 バランスの良い考え方を身につける
第四回 目標達成のための計画を立てる
第五回 生活のリズムを回復する
第六回 人間関係を改善する
第七回 心のクセに気付き、柔軟な考え方を選ぶ
第二回以降は、実践編。具体的なお悩みに向き合っていきます。
今日は問題を整理して、目標を見つける練習です。少しでも考える負担が軽くなるように私なりの解釈を加えてお送りいたします。
認知療法を実践しようしているあなたへ
ワークを始める前に、覚えておいていただきたいことが3つありますので、先にお伝えしておきますね。
- 一度にいくつもの問題を解決しようとしない。
- すぐに効果を実感できなくても、何度もくり返し練習する。
- つらくなったり、疲れたときは休む。
心療内科・精神科専門医の唐渡雅行氏はこんなふうに言っています。
寝るときまでスーツを着ていた人が初めてパジャマに着替えたときのように、最初はしっくりこない方もいるかもしれません。それでも継続することが大切です。(『うつ病診療最前線―再発させない治療法』より)
少しずつ、少しずつ、様子を見ながら、無理のないペースで進んでいきましょう。
本日のレッスン:問題を整理し、目標を見つける
では、本日のレッスンを始めます。紙とペンを用意して、一緒に考えてみましょう。
問題を整理し、目標を見つけるために、次の3つのステップをふんで考えていきます。
ステップ1 気になっていることを書き出す
ステップ2 目標をひとつ選ぶ
ステップ3 目標が適切かチェックする
では、詳しく見ていきましょう。
ステップ1 気になっていることを書き出す
まずは、あなたが今気になっていることを書き出しましょう。難しく考えず、頭に浮かんだことをどんどん書き出してみてください。どんな些細なことでもかまいません。
ここでは例として、以前ご紹介した簡単3ステップ!あなたを苦しめている悩みを減らす方法で挙げた悩みを参考に考えていくことにしましょう。

ステップ2 目標をひとつ選ぶ
次に、ステップ1で書き出した中から、ひとつ選んで目標を設定します。次の2つを参考にして選んでみてください。
①主語が一人称のもの
主語が一人称のものを選びます。私、ぼく、オレ、あたい、オイラ、吾輩、わて……etc. 他人が主語の悩みを消していきましょう。
②モヤモヤが一番大きいもの
次に、残った悩みの中で、あなたが一番気になっていることを選びます。どれも重要な悩みで選べないというときは、直感でひとつ選んでください。
もう少し具体的に、先ほどの例で説明しますね。
まず、①主語が自分ではない悩みを消します。

次に、②一番モヤモヤしている、こちらの悩みを選ぶことにします。

そして、目標を設定します。選んだ悩み・不安を解決するための目標を考えましょう。
今回は、仕事をこなす能力に不安を感じていることに注目して、自信につながる作業を目標にしてみましょう。例えばこんな感じです。
【目標】
1週間に1回、パソコンで3行日記をつける
最初は、「簡単すぎるだろ」と思うくらいの目標にしておきましょう。できるだけ具体的に、数字を入れるとわかりやすくなります。
ステップ3 目標が適切かチェックする
ステップ2で設定した目標が今のあなたの状態に合っているかチェックしましょう。ポイントは次の5つです。
【チェックポイント】
- これまでに同じような問題に直面したことがあるか?
- そのとき、どのように対処したか?
- それは成功したか?
- 何がよかったのか? 何がよくなかったのか?
- もしこの目標が達成できたら、どのようなメリットがあるか?
では、実際にチェックしていきますね。まず、「仕事ができない。社会復帰できるのか」という悩みについて。
1.これまでに同じような問題に直面したことがあるか?
はい。
2.そのとき、どのように対処したか?
コンビニのアルバイトを始めた。
3.それは成功したか?
いいえ。結果的に体調を崩し、1カ月で辞めることになってしまった。
4.何がよかったのか? 何がよくなかったのか?
ちゃんと仕事ができることがわかって、嬉しかったし安心した。でも、リハビリをほとんどせず、急に頑張りすぎたのがよくなかった。
次に。「1週間に1回、パソコンで3行日記をつける」という目標について。
5.もしこの目標が達成できたら、どのようなメリットがあるか?
無理のないペースで続けられれば、それが自信になるし、リハビリとしても効果があると思う。目標達成の喜びも思い出せるかもしれない。
このように、気になっていることを整理し、目標達成のメリットを理解できれば、前進する勇気が湧いてくるのではないでしょうか。
今日のレッスン内容を簡単にまとめました。参考にどうぞ。クリックで拡大します。

最後に
お疲れ様でした。今日のレッスンはこれで終了です。あなたのお悩みの突破口は見つかりそうですか?
問題を解決するためには事実をありのまま受け入れることが大切です。原因探しや、自分、他人を責めないように……、といっても、今は感情がほとばしってコントロールがきかないかもしれませんね。あるいは、神経が過敏になっていて痛みに対する恐怖に支配されていたり……。
次回は、そんなあなたの苦しみを軽くするためのレッスンです。あなたにとって大切な気付きが得られるかもしれません。じっくり、でも気楽に、自分観察を続けましょう。
そして、めんどくさそうな記事をここまで読んでくださったあなた、素晴らしい! 頑張った自分を褒めてあげてくださいね。エライエライ。
【次回予告】
第三回 バランスの良い考え方を身につける
<参考文献>
大野裕(2003)『こころが晴れるノート うつと不安の認知療法自習帳』創元社
高橋良斉(2002年)『 「うつ」と上手につきあう心理学―自分でできる認知療法入門
唐渡雅行(2010年)『 うつ病診療最前線―再発させない治療法
宮島賢也(2012年)『 医者の私が薬を使わず「うつ」を消し去った20の習慣
コメント
コメント一覧 (2)
ナミさんこんにちは、ご無沙汰してます
まつりかです
ナミさんの記事を参考に
一日二個自分の良いところをノートに書くという目標を立てました
更新楽しみにしています
でも無理なさらないで下さいね(^ー^)
どうもお久しぶりです。コメントありがとうございます。
いい目標ですね。自分の良いところを振り返る習慣ってすごく効果的だと思います。
今日、次のレッスンを更新する予定でしたが、まつりかさんのお言葉に甘える結果となりました。暴走しそうなところ助けていただき、ありがとうございましたー。