
シリーズ【自分でできる認知療法】
第一回 認知療法とは
第二回 問題を整理し、目標を見つける
第三回 バランスの良い考え方を身につける
第四回 目標達成のための計画を立てる
第五回 生活のリズムを回復する
第六回 人間関係を改善する
第七回 心のクセに気付き、柔軟な考え方を選ぶ
認知療法シリーズ、6日目を迎えました。自分が今抱えている問題がどのようなものか見えてきましたか?
今日は人間関係を改善するヒントをご紹介いたします。これまでのワークを参考にしながら、問題を整理し行動に移す準備をしていきましょう。
本日のレッスン:人間関係を改善する
あなたのストレスや不安の元となっている人間関係を改善するために、次の3つのステップで進めていきます。
ステップ1 ストレスになっている人間関係を書き出す
ステップ2 問題を整理する
ステップ3 自分の気持ちを相手に伝える
詳しく見ていきましょう。
ステップ1 ストレスになっている人間関係を書き出す
まずは、あなたが抱えている人間関係の悩みをすべて書き出しましょう。思いつくことをどんどん書いてみてください。
今回もこちらの悩みをもとにご説明していきますね。
>>簡単3ステップ!あなたを苦しめている悩みを減らす方法
悩みをたくさん書き出すコツも参考にしてみてください。

ステップ2 問題を整理する
問題を整理する方法は次の5つ。
①相手をはっきりさせる
②「現在」「過去」にわける
③「現在」の問題が改善可能かチェックする
④「過去」の人・体験の良い面と悪い面を書き出す
⑤将来どのような関係を築きたいか書き出す
先ほどの例で見ていきましょう。
①相手をはっきりさせる

赤ペンで目立つように相手の名前を書き込みました。
②「現在」「過去」にわける

「現在」は黄色、「過去」は青色の下線を引きました。
③「現在」の問題が改善可能かチェックする
【高】改善されつつある
今の状態を維持しながら、より良い解決策を探しましょう。
【中】改善の可能性がある
お互いの意見の共通点・相違点を書き出し、妥協案を書き出します。
【低】改善の可能性がない
お互いの意見の共通点・相違点を書き出し、お互いの将来につながる形で別れられるようにしましょう。

これを元に、ワークシートに書き込んでいきましょう。記事の最後にシートをご用意しています。

④「過去」の人・体験の良い面と悪い面を書き出す
過去のできごとは、別れた人を美化しすぎたり、悪く考えすぎてしまったりすることがよくあるので、できるだけ客観的に見ていきましょう。

⑤将来どのような関係を築きたいか書き出す

ステップ3 自分の気持ちを相手に伝える
情報をある程度整理できましたら、今度は実践です。
問題を解決するためには、言いにくいことを言わなければならないこともあります。「こんなこと言ったら悪いよね」「自分勝手な言い分かな」と思うと、相手を正す意見を伝えるのは、なかなか積極的にできることではありません。
いくら頭で理解していても、不満は少しずつ心にたまっていき、その不穏な空気は相手にも伝わります。その結果、関係がぎくしゃくしてしまうことはよくあることです。
このようなときは、思い切って自分の気持ちを伝えてみるといいかもしれません。
精神科医の大野裕氏は、自分を伝える会話術として2つのアドバイスをしています。
①落ち着いて話をする
自分の気持ちを伝えようとすると、どうしても感情的になってしまいがちです。焦らず、穏やかに話すためにも伝えたいポイントを整理しておきましょう。
[ポイント]
- 相手の気持ちを深読みしすぎない。
- 「なぜ、なぜ」と理由を聞きすぎない。
- 話をしなくても自分の気持ちがわかってもらえると、期待しすぎない。
- 自分の考えは、具体的に簡潔に伝える。
②自分の気持ちをバランスよく伝える
気持ちの伝え方は次の3つ。
- 攻撃的
- 受身的
- 自己表現的(アサーティブ)
攻撃的・受け身的な伝え方を元に、バランスの良い表現方法を考えます。
例)うつ病と診断され実家で療養中。父には「何事も自分次第。おまえにその気がないだけだ」と一喝され、母には「あなたのためを思って言っているのに!」「仕事もしないで情けない」と悲愴の言葉をぶつけられ……。
【攻撃的な受け答え】
「うるさい! 私だって好きでこんな状態になってるんじゃない! 先生にも休むように言われてるし。なんでわかってくれないの?!」
【受身的な受け答え】
「すみません……(私なんて死ねばいいんだ)」
【自己表現的(アサーティブ)な受け答え】
「ごめんなさい。仕事もせずに横になってばかりで申し訳なく思ってる。お父さんやお母さんにサポートしてもらってることも本当に感謝してる。でも、どうしても身体がだるくて動くのがつらいんだ。それでさっきみたいな言葉を聞くと、自分なんていなくなればいいのにってすごく苦しくなる。どうやったら良くなるか一緒に考えてくれたら嬉しんだけど……」
……まぁ、なかなかこの通りに伝えることは難しいかもしれません。相手がどう反応するかにもよりますしね。
それでも、「こういう言い方なら受け入れてもらえるかな」といろいろな選択肢を考え、練習を重ねることで、だんだんと気持ちを言葉にのせられるようになるはずです。
最後に
今日もお疲れ様でした。
人との関係を築くのは簡単なことではありません。いくら頭で考えても解決しませんし、相手があることなのでコントロールもできません。
健康で元気なときでさえそうなのですから、うつ病を抱えている場合はなおさら。
自分の気持ちを伝えることは大切ですが、そのことであなたの苦しみが大きくなってしまうのなら、今は問題を先送りする選択をしましょう。
どうか、あなたの心が少しでも軽くなりますように。
【次回予告】
第七回 心のクセに気付き、柔軟な考え方を選ぶ
【ワークシート】

(印刷方法:右クリック→「名前を付けて画像を保存」→ファイルを開いて「印刷」)
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<参考文献>
大野裕(2003年)『こころが晴れるノート うつと不安の認知療法自習帳』創元社
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