「やる気は出すものではなく、みずから動けば自然と出てくるもの」
こんな言葉を聞いたことがあります。
確かに、「やりたくないな~」と思っても、目の前にある一つのことに集中して動き始めると、だんだんやる気になって、調子が出てくることはあります。
しかし、その目の前にある一つのことに集中するための第一歩を踏み出せないのがうつ病です。
うつ病急性期はもちろん、症状が安定してくる回復期に入ってからも「何もしたくない」という気持ちが強く現れることはよくあります。
うつ病療養中は、やる気どころか縦のものを横にすることさえおっくうに感じてしまうほどエネルギーが低下している状態。
そういった前提を配慮することなく、「やる気は出すものではなく、自ら動けば自然と出てくるもの」なんて言われたら……。
「みずから動けないから、悩んでるのに……」と訴えたくなります。
こういう場合、その言葉はサラリと受け流しておきましょう。アドバイス通りにできない自分を責める必要はありません。今このアドバイスは適切ではないからです。
やる気が出ないのは、あなたが怠けているのではなく、心と身体の健康が損なわれているから。
とは言っても、その相手に対して
「悪気があって言っているわけではないし」
「良くなってほしいという願いから、私に声をかけてくれたのに……」
「相手の好意を無視するなんて……」
真面目で優しいあなたは、そんな風に感じるかもしれません。
そういうときは、相手の「あなたのことを想っているよ」という気持ちだけを受け取ればOK。そのことに対して「ありがとう」を伝えましょう。
療養中は、「やる気を出さねば」という捉われをポイすることから。やる気が出ないときは、それなりに過ごす。何もしないで、ぼ~っとしていればそれでいい。
後ろめたく思うことはありません。だって、健康な身体を取り戻すために休養しているんですもの。もっと力を抜いて、のんびり過ごしましょう。それが「休む」ってこと。
もしかしたら、
「私ってなんて怠け者なんだろう……」
「やる気がないなんて、ただの甘えじゃないだろうか……」
などという思いに駆られて、落ち込んでしまうこともあるかもしれません。
私がまさにそうでした。焦りの気持ちがどんどん強くなって、見事すっぽり、悪循環にハマってしまうんです。
「やらなくては!」
↓
「できない……」
↓
「どうして出来ないんだ……!」
↓
「私はダメな人間だ……」
↓
「ちゃんとやらなくては!」
:
:
↓
という具合に、強迫的な考えと自己否定が延々と続いていきます。頭ではわかっていても、焦る気持ちはいつでもどこでも、うじ虫のように湧いてきます。
もし、そういう焦りを感じたときに、絶対してはいけないこと。
それは、自分を責めることです。
自分を責め続けても、得られるものは何もありません。がんじがらめになって、身動きが取れなくなるだけ。
とにかく大事なことは、思考をストップさせること。これに尽きると思います。何度も繰り返すネガティブ思考を止めれば、気持ちが少しはラクになります。
さて、次に問題となってくるのは、ぐるぐる思考をストップさせるにどうしたらいいか? ということ。
私は、「ストップ!」「やめー!」と自分に呼びかけます。
ガチガチに固まった身体の力を抜き、あなたの脳内で働く労働者たちを解放するイメージで。総監督であるあなたが、脳内の労働者たちに呼びかけます。
「ストップ!」「そこまで!」「作業終了!」
それでも働こうとする人たちがいれば「強制終了」。労働者にも休みが必要です。
こんな風にイメージしてみると、多少は効果があるような気がします。
そして、あとはゆっくり休むだけ。
心も身体も元気になれば、自然とやる気は湧いてきます。時間はかかるかもしれません。でも、今の状態が一生続くことはないはず。だから、心配ご無用。
気負わず、のんびりいきましょう。
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