1年ほど前、私は体調を崩し、ずっと寝込んでいました。

何もする気になれず、気分は落ち込むばかり。トイレに行くのもおっくうでした。外出するのは通院日だけ。2週間に一度の診察にさえ行けない日がありました。

そんな日々が4カ月以上続き、「私、このままひきこもりになっちゃうかもなぁ」、そんなふうに考えるようになりました。

何年も実家にこもり続ける生活。そうなりたくはありませんでしたが、そのときの状態はまさに「ひきこもり」。とても普通に生活できるレベルではありませんでした。

家族に迷惑をかけて、甘えて、そんな自分が嫌で嫌で仕方ない。

でも、そんな時期があったからこそ、「ひきこもり」になった人の気持ちがわかるような気がします。本人は誰にも言えない悩みを抱えて苦しんでいるんですよね。

先日、「ひきこもり」の実態について書かれた本を読みました。


当事者や経験者、家族、支援者、医師など、さまざまな立場からの現状を取り上げています。

「一体、なぜひきこもるのか?」

その答えを求め、取材を続けた著者が目の当たりにした現実。ひきこもり当事者だけではなく、周囲の人々の苦悩にも触れています。

なかなか人に言えない「ひきこもり」の悩み


これまでは学校に通えない子どもの「ひきこもり」が問題視されてきました。

最近では不登校児に限らず、社会に出た後にひきこもる大人が増えているそうです。「ひきこもり」が長引くケースも多く、30代、40代の年齢層でも多くみられるようになったとか。

「ひきこもり」に対しては、まだまだ理解されていない部分が多く、「怠け者だ」とか「ダメ人間だ」とか心無い言葉を浴びせる人もいます。そのような状況で、第三者に相談するのは相当の勇気がいりますよね。

本人だって好きで引きこもっているわけじゃありません。その家族も、ただ黙って容認しているわけではない。どうしたら社会復帰できるか真剣に考え、常に悩み苦しんでいます。

世間の目は時に暴力的に働きます。どんなに強い心を持ってしても、多数派の意見にはかないません。

心が弱っているときに、このような否定的な意見を知ったら不信感は強くなります。そうなると、助けを求めることが難しくなります。当事者と家族が孤立していけば、社会復帰のきっかけをも失い、ますます問題解決から遠ざかることになります。

どうしたらこの悪循環のループから抜け出せるのか……。

「ひきこもり」を支援する国や団体


本書では、回復・支援のための活動も紹介されています。

その中で注目したいのは、厚生労働省の「ひきこもり対策推進事業」です。

厚生労働省 福祉・介護 「ひきこもり対策推進事業」

当事者や家族が必要な支援を受けられるように、「ひきこもり地域支援センター」を各自治体に設置。平成23年度には、家庭訪問を中心とする支援を開始しています。

「ひきこもり地域支援センター」では、ひきこもり状態にある本人や家族に、どこへ相談すればいいかを教えてくれます。専門家や「ひきこもり支援コーディネーター」を中心に、ひきこもり対策に必要な情報を提供。

ひきこもり対策には、地域ぐるみのつながりを構築していくことが大切なことだそう。

平成25年度からは、ひきこもりサポーター養成の研修も始まります。これらの支援により、少しでも多くの人の苦しみが軽くなることを願うばかりです。

今の私にできるのは知ること。「なぜ」「どんなふうに」苦しんでいるのか当事者の気持ちを考えられるようになれたらと思います。