人間関係のもつれが原因で心が痛む……。


生きていく上で必ずぶつかる問題です。

悩みがあって当たり前とは言っても、心ない言葉によって受けた苦痛はつらく身にこたえます。そして、その人が自分にとって大切な存在であればあるほど、ダメージは大きくなります。

うつ症状で感覚が過敏になっているとき、その苦しみは絶望につながります。頭の中がぐちゃぐちゃで「私はもう死ぬしかない」という考えしか浮かばないときには、まず休息を。とにかく深く考えず休むことが第一です。

ある程度時間が経つと、少しずつ気持ちを整理できるようになってきます。そのとき、つらかった過去を思い出して心が痛むかもしれません。「傷跡がうずく」といった感覚でしょうか。

この傷のイメージは、私にとって苦しみから抜け出すきっかけになりました。

例えば、転んでひざに擦り傷ができたら、消毒をして、傷口が開かないように絆創膏を貼ります。数日経つと、傷口にカサブタができます。

そのカサブタ、かゆくなったり、どうしても気になってカリカリ剥がしたりしてしまうことありませんか?

私はよくやってしまいます。「触っちゃダメ!」と思いながらも、ついつい。

治りかけの傷口って、どうしても気になってしまうんですよね。でも、せっかく固まったカサブタをはがしてしまったら、また血が出ます。痛みも感じます。

心の傷もそれと同じ。

心の傷口にできたカサブタをはがすこと、イコール、自分が傷ついたときのことを思い出したり、そのことについてあーでもないこーでもないと考え続けたりすること。

だから「触っちゃダメ!」。触らなければ、感じずにすむ痛みがあるわけです。


……と偉そうに言ってますが、過去の嫌~なエピソードを思い出しては悲劇のヒロインを演じ、そこに延々と浸っているのが、この私です。

「あの人にあんなひどいこと言われたせいで、私は今でも苦しんでいる」
「私の存在を否定するようなアイツの言動が許せない」
「ずっと信じてたのに、平気で裏切るなんて……!」

そんな憎悪をぐつぐつと煮えたぎらせているところに、自責や悲観的思考が加わります。

「人のせいにするなんて私は最低な人間だ。悪いのはすべて私。」
「私がいなければ、みんな幸せになれる」
「私なんか死んだ方がましだ」

こんな根拠のないことを考えてしまうんです。怒り・憎しみ・自己嫌悪が入り混じって、ドロロロロ~ととぐろを巻いている状態。コワイコワイ……。

これは、傷口をえぐって中身をグリグリほじくり出すのと同じこと。どんなに必死にほじっても、得られるものは痛みだけ。

そう。わかってはいるんですが、やめられないんですよね……。

そんな悩みを抱えている人に(というか私に)ご紹介したい言葉があります。
自分の傷は、これを無視する
これは、しりあがり寿さん・祖父江慎さんの共著『オヤジ国憲法でいこう!』に書かれたオヤジ国憲法、第1条・第3項の条文です。

この本のターゲットは中学生。多感なお年頃の「ヤング」に向けて、「オヤジ」の考え方も悪くないゾ~! というメッセージを伝えるユニークな内容です。

「ヤングに向けた本?! あたしゃ、もういい大人だよ」

そう思いました? いやいやいや、あなどるなかれ。オヤジの言葉、妙に納得してしまうんですよ。ほどよい力の抜け加減で。

「自分の傷は、これを無視する」

一見、乱暴に思えますが、冷静に考えてみると確かにその通りなんですよね。

考えすぎる人は、どんなに考えないようにしても考えずにはいられないので、「無視無視!」と思っておくくらいでちょうどいい。

さらに本文には、興味深い言葉が続きます。
自分にもっと鈍くなってね
「自分の傷」も、頭の隅で「どうでもいいかも」
 思っておくくらいがちょうどいいかもしれない

そして、こんな問いかけも。
頭の中を自分の傷のことだけでパンパンにするのも、いかがなものであろう

うーーーん、確かに……。オヤジの言う通りだ。



「過去に受けた心の傷が忘れられない」と悩み、つらい思いをしているのなら。
  • 「私の心を傷つけたヤツのことなんか、考える時間がもったいない」と考えてみる。
  • 思い切ってその悩み自体を無視してみる。
  • 普段から「自分なんてどうでもいいな~」といい加減に思っておく。

「清く正しく美しく」をモットーに生きようとしている人は、こういった考え方を知ることで、柔軟に対応する術が身につくのではないかなぁと思います。

「悩みは忘れなさい」と諭されると、「忘れられないから困ってるんだ!」と言いたくなります。でも、「アレコレ考えてしまうような問題の答えはわからんから無視!」と言い切られると、拍子抜けしてしまいますよね。

それに、この考え方って、ほとんどの心の悩みに対して言える万能な答えです。

「オヤジ」って、実はすごい。


<本日の一冊>
しりあがり寿・祖父江慎 『オヤジ国憲法でいこう!』 理論社 2005年